ここでは、研究所が所蔵する二種類の資料の全文画像を、対照表付きで提供する。
  その一は、宋撫州公使庫刊《礼記釈文》。これは、いわゆる撫本《礼記》に附刻されたものが単独で伝存しているもので、傅湘の手を経て,東方文化學院東京研究所に帰し,現在は当研究所に蔵されている。《藏園群書經眼》著。ほかに阿部吉雄、阿部隆一の解題が有り,それぞれ《東方文化學院東京研究所經部禮類善本》(《東方學報(東京)》第六冊)、《日本國見在宋元版本志經部》(《阿部隆一遺稿集》第一卷)に見える。
  同版本に、鉄琴銅剣楼旧蔵書が有り、《鐵琴銅劍樓藏書目》に本書の通行本《釋文》に優れる諸條が挙げられている。撫本《禮記》の正文は海源閣に旧蔵され,《釋文》部分とは別に流傳してきたが、現在は正文も《釋文》も北京の國家圖書館の所蔵に帰しており,再び一箇所に集まることが出来たことは慶賀に堪えない所であるが、残念なことは、《古佚叢書三編》・《中國再造善本》二種類の撫本《禮記》の影印本には、どういう訳か、いずれも《釋文》の部分が収録されていない。
  傅氏舊藏本には補鈔が多く、版本的價値という点では鐵琴銅劍樓舊藏本に及ばないはずであるが,鐵琴銅劍樓舊藏本が閲覧に不便である以上、傅氏舊藏本の画像でも無いよりはずっとましであろう。我々はネット上で画像を提供するだけだが、鐵琴銅劍樓舊藏本についてはその影印本が一日も早く出現することを祈る。
  第二種は日本の江戸時期の《禮記》刊本。このホームページ「江戸・明・古代」に沿って、この版本を選んでみた。江戸時代の日本においては、中国刊本は高価な輸入品であり、一般に多く流通したのは日本の刊本であっただろう。そして、江戸時代の刊本は、当然ながら大部分が中国刊本を底本とするものであった。この《禮記》刊本を見ると、欄外の注記が多数あり、版本の文字の異同が記されており、往往にして明本は何の字に作る、といった指摘がある。これらの内容を通して、この版本の底本および參校諸本を推測することが可能であり、その中で明代版本が重要な意味を持っていたことも確認できるであろう。
  《禮記釋文》には複雜な版本の問題がある。嘉慶年間に重刻された撫本附刻の《禮記釋文》にしてから、前後二種の全く異なる内容を持つ。通志堂には《經典釋文》全体の刻本の外に《禮記釋文》を単独で刊行したものが有ったとされるが、諸家の目録に見えないし、現存本が在るという話も聞かない。撫本《釋文》の本來の姿と言っても、我々はまだ鐵琴銅劍樓舊藏本を見ることができないし、まして陸徳明編纂當時の姿など更に遠く霞む。陸徳明やその後の各種《釋文》刻本は、いずれも古代のテキストのあるべき姿を考訂・討論しようとしたものであり、明人・江戸人が《禮記》を翻刻したというのも趣旨は同様であった。水准や方法の相違があるに過ぎないということではあるが。

  使用方法:
  まず一つ《礼記》の篇名を選ぶと、全体の画像リストが現れます。左の欄は《釈文》の画像、右の欄は《礼記》の画像で、それぞれ原本の順序に並べてあり、真ん中の欄が篇名です。左・中・右の欄の目録は相互に対応しており、対応する欄の画像番号をクリックすると、対応箇所の画像を開くことができます。  

        
  這裡提供本所收藏的兩種版本的圖像文本,另加對照功能。
  一種是宋撫州公使庫刊《禮記釋文》。此本原是所謂撫本《禮記》的附,後來單獨流傳,經傅湘手,轉歸東方文化學院東京研究所,現藏在本所。《藏園群書經眼》著。另有阿部吉雄、阿部隆一的解題,分別見《東方文化學院東京研究所經部禮類善本》(《東方學報(東京)》第六冊)、《日本國見在宋元版本志經部》(《阿部隆一遺稿集》第一卷)。
  本書同一版本有鐵琴銅劍樓舊藏本,《鐵琴銅劍樓藏書目》詳言本書優於通行《釋文》諸條。撫本《禮記》正文舊藏海源閣,與《釋文》分別流傳,今則正文、《釋文》均歸北京國家圖書館,破鏡重圓,可喜可賀。令人十分遺憾的是,《古佚叢書三編》、《中國再造善本》兩種撫本《禮記》的影印本,不知為何都沒有收《釋文》部分。
傅氏舊藏本有較多補鈔,版本價値當不如鐵琴銅劍樓舊藏本,可是鐵琴銅劍樓舊藏本既然不便査閲,提供傅氏舊藏本的圖像也可謂慰情聊勝無。我們祇在網上提供圖像,祈望早日能看到鐵琴銅劍樓舊藏本的影印本。
  第二種是日本江戸時期刻本《禮記》。本網頁以「江戸、明、古代」為主題,所以選擇這一版本。在江戸時期的日本,中國刊本是進口珍貴物品,流傳較多的是日本刊本。而且江戸時期刊本的底本大部分自然是中國刻本。翻閲這一《禮記》刊本,也能看到很多欄外眉注,記版本文字異同,往往指出明本作如何字。透過這些容,我們可以推測這種版本的底本以及參校本,其中明代版本的重要性是不能忽視的。
  《禮記釋文》的版本問題非常複雜。嘉慶重刻撫本附刻的《禮記釋文》就有先後兩種截然不同的容,據通志堂除了整套《經典釋文》外還曾單刻《禮記釋文》,但絶不見書目,未聞有存本,至于撫本《釋文》的本來面目,我們還看不到鐵琴銅劍樓舊藏本,更不用明當時的本真面目了。陸明以及後來的一種《釋文》都在考訂、討論古代文本的本真面目,明人、江戸人翻刻《禮記》也都是如此,只不過水准、方法有不同而已。

  査閲方法:
  先選定一個篇名,可以進入全部圖像的目。左邊是《釋文》圖像,右邊是《禮記》圖像,完全按照原本的順序排列,中間是篇名。左、中、右欄的目互相相應,點相應欄位的圖像號碼,即可看到相應容的圖像。